電装系の整備入門講座

はじめに

このページでは新入生向けに、自動車の電装系の整備について解説します。 ここでは自動車部の活動の中で触れることが多い、社外部品周りの整備を軸に、 電装系整備で注意すべき点を説明します。 このページで説明する点を踏まえれば、電装系整備で大きな失敗をすることはないでしょう。 ぜひ最後まで目を通した上で積極的に挑戦してみてください。

どの整備にも言えることですが、電気という目に見えないものを相手にする整備ですので、 電装系は「簡単」ではありません。 自信がない場合はためらわず先輩に相談してみましょう。 ある程度自信があるときでも、作業が終わった様子を見てもらってダブルチェックをお願いすることが有効です。

電装系基本のキ

バッテリーと電圧

一般的な自動車のバッテリーは12Vの鉛蓄電池です。 一部の乗用車やトラックでは24V、最近は48Vを採用する車種(e.g., テスラ・サイバートラック)などもありますが、 自動車部で目にする車はほぼ12Vです。 実際にはピッタリ12Vということはあまりなく、エンジンを切っていると10.5~12V程度、 エンジンを書けると13~14V程度の電圧が電装系に供給されます。 これは後に説明する、エンジンを動力とした発電機「オルタネータ」が駆動されるためです。

3つの電源系統

自動車には大きく分けて3つの電源系統があります。 いずれもバッテリーに接続されることは変わりないため、電源モードと言ったほうが正確かもしれません。

  1. バッテリー直結電源(バッ直、常時電源)
  2. アクセサリ電源(アクセサリ、ACC)
  3. イグニッション電源(イグニッション、IGN)

電装部品がどの電源系統に接続されるかはその部品の性質によって決まります。 例えばハザードランプのように、車が動いているときも停まっているときも電源を供給し続ける必要がある部品は、 原則としてバッ直電源に接続されます。 ナビやシガーソケットのような装備品はキー位置がアクセサリのときに電源が供給されるよう、 アクセサリ電源に接続されます。 電動格納ミラーなどキー位置がイグニッション、つまりエンジンがかかっているときのみに駆動される部品は、 イグニッション電源に接続されます。

例外としてナビや追加メータなど後付の電装品は複数の電源が接続されることがあります。 これはデータをメモリに保持するためや、これらの装備品が車両のキー位置を認識するためです。

またナビや追加メータなど、灯火のオンオフによって輝度などが変化する装備品には先程挙げた3つの電源以外の 「イルミネーション線(イルミ)」が接続されることが多いです。 イルミは電源というより、ライトのオンオフを伝える信号線という意味合いのほうが強いかもしれません。

何でもかんでもバッ直に繋いでしまうと、バッ直はキーOFF時にも常に電源を供給し続けてしまうため、 バッテリーあがりの原因となります。 バッ直につなぐものは必要最低限にするか、別途スイッチを設けるなどしましょう。

ヒューズ

ヒューズとは、過電流から電子機器を保護するための電子部品です。 似た役割を持つもので、ブレーカ(サーキットブレーカ)というものを皆さんは見聞きしたことがあると思います。 家庭にあるスイッチのようなものがついたものです。

ブレーカもヒューズも許容電流が決められており、その電流値を超えると電流を遮断する点では共通しています。 ブレーカは一度電流を遮断したあともスイッチを元の位置に戻せば復帰するのに対して、 ヒューズは過電流時の熱によるエレメントの溶断により電流を遮断するため、再使用は不可能です。 そのため、ヒューズが切れてしまった場合には、復帰のために切れたヒューズを新品と取り替える必要があります。

ヒューズが切れるということは、その電気系統に何かしらの原因で過電流(ショート、過電圧など)が流れたということです。 したがってヒューズ切れの際は過電流が流れた根本原因を突き止めることが重要です。 よくあるケースでは、「ナビの交換時にバッテリーを外していなかったため、作業中うっかりプラスの配線とナビの金属筐体が接触してしまい、 ショート」というようなことがあります。 このような作業ミスが原因であることが明らかな場合はヒューズ交換だけで問題ないですが、 心当たりがないのにヒューズが勝手に切れてしまう場合はどこかでショートなどが生じている予兆です。 原因をよく検討してからヒューズを交換しましょう。

自動車で用いられるヒューズは「平型」や「低背」と呼ばれる、カラフルで平べったいものが多いですが、 他にも「ガラス管ヒューズ」などの種類があります。 純正でガラス管ヒューズが使われることはあまりありませんが、社外の電装品には一部採用されていることがあります。

これらヒューズはヒューズボックスという場所にまとめて配置されています。 車種によって配置が異なりますが、概ねエンジンルーム内に1つと運転席or助手席足元付近に1つあることが多いです。 大雑把に車内のヒューズボックスには車内の電装系のヒューズが、 車外のものには車外の電装系ヒューズが配置されています。

ヒューズ自体、高い部品ではないので、「万が一」に備えて予備を携帯しておくといいかもしれません。 5A~15Aがよく用いられるヒューズですので、これらが含まれるセット品などを一つ持っておくと安心です。 また車種によってヒューズの形状が異なるので、自分の車に合ったものを選びましょう。

ボディアース

自動車の電装部品を観察していると、稀に導線が一本しか通じていないものがあります。 電気製品を動かす際にはプラスとマイナスが必要なはずですが、なぜこのような作りで動作するのでしょうか。

秘密は「ボディアース」という電源システムにあります。 自動車の場合、バッテリーのマイナス端子はボディに直接接続されています。 これにより自動車のボディ全体をひとつの大きな導線とすることができます。 こうすることで、従来はプラスとマイナスの導線を2本引く必要があったのが、 最低プラス1本あれば電装部品を駆動することができるようになります。

例外的に、大電流が流れる部品(オルタネータ、セルモータなど)はボディアースだと十分な接点が取れないため、 バッテリーに直接繋がる導線を別途持っていることもあります。 ケースバイケースではありますが、多くの部品はボディアースを利用しています。

これから整備をするあなたに、必ず心がけてほしいこと3つ

以上で自動車の電気系統の基本をお話しました。 これを踏まえて安全に電装系をいじるための心得をご紹介します。

  1. 作業時バッテリーマイナス端子を外せ!
  2. 端子の固定は確実に!
  3. 配線はきれいに整理すべし!

1. 作業時はバッテリーマイナス端子を外せ!

ボディアースについては先程お話しました。 電装系の整備はどうしても狭い場所での作業が多くなります。 そうなると自ずと工具などでプラスとマイナスの配線をショートさせてしまう……そんなことがよく起こります。 この時、バッテリーのマイナス端子を外すとボディには電気が流れなくなり、 仮に短絡させてしまったとしても電流が流れません。 作業前にバッテリーのマイナス端子を外すことは、人と車どちらも守るための最低限の掟です。

2. 端子の固定は確実に!

端子の固定が不確実だと走行中の振動等が原因で端子が外れ、それがどこかにあたり、 最悪の場合ショートを引き起こすことがあります。 このようなことを防ぐためにも、端子は適切なものを選択し、取り付けは確実に行いましょう。 後で詳しく述べますが、そもそも確実な固定ができない端子を使うことは論外です!

3. 配線はきれいに整理すべし!

配線がぐちゃぐちゃになっているといいことはありません……。 見栄えも悪いですし、次整備するときの邪魔になったり、垂れ下がった配線が運転中足に絡まったり、 エンジンルーム内の可動部に絡まって故障を誘発したり……意外と大きなリスクがあります。 そのため、配線は必要最低限の長さで作り、結束バンドやビニールテープなどを活用して不必要に動くことがないように固定 するように心がけましょう。 社外の電装系配線で車が不動になるとか、マジで恥ずかしいぞ!(経験者は語る)

揃えるべき道具

さて、ここからはいよいよ実践編です。 道具を揃えるところからはじめ、電装系整備の基本となる、「圧着端子を留める」ところまでを目標として説明します。

電装系の整備では、通常の整備に使う工具に加えて専用の工具や資材が必要となります。 これから電装系の整備に手を付けようと考えている人はまず以下の工具や資材を揃えてみてください。 いずれもネットやホームセンターで簡単に手に入るものです。

圧着工具圧着端子はセット販売されているものもありますので、 特にこだわりがなければまずはセットを購入するのがおすすめです。

だいたいの圧着工具にワイヤストリッパもついています。 あまり使い勝手は良くないですが、端子の圧着作業自体そこまで頻繁に行うものではないので、 まずは圧着工具付属のもので十分だと思います。

市場には工具なしで配線の分岐等ができるという触れ込みで エレクトロタップ という資材が流通しています。 圧着端子に比べてエレクトロタップは固定力が弱く、走行の振動等で端子が外れる可能性があります。 端子が外れて接続先の電装系が使えなくなるだけならばいいですが、ショートを誘発して最悪の場合 車両火災 に 繋がりかねないので、エレクトロタップはできるだけ避けましょう

デジタルマルチテスタの選び方

デジタルマルチテスタもネットで調べると様々な種類が販売されています。 自動車は使う分には基本的に以下の項目が測定できるものであれば十分です。

他にも以下の機能が搭載されていると作業効率が向上し、テスタでできることが広がります。

小噺: 高いテスタ、安いテスタ

高いテスタと安いテスタの違いは基本的に測定精度や耐久性・信頼性にあるようです。 筆者はホームセンタで購入した2000~3000円のテスタとAliExpressで購入した700円(笑)のテスタを使用しています。 直流の電圧や電流の測定では両者にほぼ差はありませんでした。 一方で700円のテスタでは、抵抗値やhfe(トランジスタという電子部品のパラメータ)、また交流電源の周波数測定などが 正しく測定できないことがありました。 しかしこれらのパラメータの測定は本格的な電子工作をするレベルでないと使わない機能ですので、 車載工具として考えるなら機能は最小限で十分ですし、高いテスタを買う必要もないと筆者は考えています。

導線の選び方

導線の種類について本格的に論じ始めると本当にキリがないので、ここでは 太さ に焦点を絞って議論します。 ホームセンターやカー用品店の電気用品コーナーを覗くと様々なコードが売られていますが、よく観察すると一部の例外を除けば 概ね「長さ」「被覆の色」そして「太さ」で区別されていることが分かると思います。 「長さ」や「被覆の色」は好みや使用シーンに応じて使い分ければいいですが、「太さ」はどのように考えればいいのでしょうか。

まず導線の太さには2つの規格があります。 AWGSQ です。 殊、自動車ではSQが選好される傾向があります。 SQは「スケア」と読み、芯線の断面積 [mm^2] を表します。 自動車用でよく見かけるのは 0.5sq、0.75sq、1.25sq あたりです。

「オームの法則」から明らかであるように、 芯線が太いほど抵抗率が小さくなり、すなわち許容電流量が大きく なります。 機会があれば自動車のエンジンルームを見てみてください。バッテリーターミナル直結のものや、セルモータ、オルタネータ等の大電流が流れる 電装系のコードは太いものが多いですが、それ以外ではもっと細いものが使われています。 導線は太いほど多くの電流を流せる一方で、取り回しが悪化するので、使用する箇所に応じて適切なものを選ぶことが肝心です。

端的に、まずは 0.75sq の、赤と黒のコードを揃えましょう。

理由は0.75sqは許容電流量と取り回しのバランスが優れているから。 色については単純で、最低限「プラス」と「マイナス」が見分けられたほうが作業効率も上がるからです。 扱う配線の種類が増えてきたら黄色や青など他の色のコードも買い足していけばいいと思います。 太さに関しては、自動車用コードでよく見かける エーモンの0.75sq を例に見てみます。 このコードは12Vで80Wくらいまでなら問題なく使えるようです。 80Wの量的イメージとしては、ハロゲンヘッドライトのバルブが1個あたり60W程度の電力消費量ですので、 それくらいなら余裕を持って使えるということです。 電装系の中でもヘッドライトバルブ(特にハロゲン)はかなり電気を食う部品ですから、 0.75sqもあればだいたいの電装系には対応できます。 また被覆込みの太さが2mm程度なので、取り回しも良好です。

どうしても0.75sqがない場合は0.5sqや1.25sqでも問題ありません。 エーモンの製品の場合、0.5sqでも12V/60Wまでは対応しています。 1.25sqは使用可能電力は140Wと申し分なく、やや取り回しには苦労しますが、 ナビ裏の配線などで使う分には我慢できる範疇であると思われます。

純正コードが太い箇所、例えば前述したバッテリーターミナル、セルモータ、オルタネータなどの電装系のコードを引き直す場合は それに見合ったコードを使いましょう。 また追加メータなどの配線では0.75sqや0.5sqでも太すぎる場合があります。 こういった小電力や信号を扱うだけの配線では0.2sqのような極細のコードも検討が可能です。

圧着端子とは

圧着端子とは、導線に圧着工具で「かしめる」ことで取り付ける端子です。 「かしめ」というのは要するに圧着工具のてこを使って端子を導線に「押し当てる」「押しつぶす」ようなイメージです。 導線にはビニールの被覆がついているので、実際には導線の被覆の一部を剥いて端子を取り付けることになります。

圧着端子には後述するように様々な種類がありますが、基本構造は同じです。 圧着端子を観察すると「C」の字のようになっている部分が2箇所あります。 ひとつは少し小さく、もう一つは少し大きくなっています。 少し爪が芯線を掴む部分で、大きい爪が導線の被覆を掴む部分です。 つまり小さい方は電気を流す役割を果たし、大きい方は端子が抜け落ちないように被覆をホールドする役割を持っているということです。 形は似ていますが、役割が異なるんですね。

圧着端子にはだいたいセットで被覆がついています。 端子を取り付けただけだと実際の接点以外の余計な部分も電気が流れるようになってしまうので、 必要部分だけむき出しにしていらないところを絶縁するのが被覆の役割です。 透明なゴムっぽいものが被覆です。 これは適合する端子によって形状が異なるため、使用する端子の種類に応じて使い分ける必要があります。 前述のようにだいたい端子とセットでついてくるので、他のものと混じることがなければ基本的に迷うことはないかな、と思います。

圧着端子の選び方

圧着端子には非常に多くの種類があり、自分で選ぼうとするとなかなか決めづらいと思います。 そこで圧着工具セットに含まれる端子をベースに、なくなったら買い足し・必要なものがあれば追加購入というふうに 揃えていくことをおすすめします。 ちなみに自動車整備でよく使う端子は以下の通りです。

ここでは自動車用に広く使われる「オープンエンド」タイプの圧着端子の説明をします。 自動車以外では「クローズドエンド」と呼ばれる、圧着部分の形状が少し異なるものが使われることが多いようです。 クローズドエンド端子をオープンエンド用の圧着工具でカシメようとすると(その逆も同様)うまく圧着できないなどの トラブルの原因になりますので、特に端子を単体で買い足す場合は注意してください。

丸型端子

先端が丸型の端子で、使う際は穴にボルトやネジを通して締めて使います。 しっかり固定でき外れづらいのが特徴ですが、端子のつけ外しにボルト・ネジを回す必要があります。 ネジが緩んだとしても、ネジ自体が外れてしまわない限りは端子が外れてどっかに行ってしまうことがありません。 外れてほしくない箇所や、複数部品のボディアースを一箇所でまとめて取りたいときなどに使います。

クワ型端子

丸型端子に似ていますが、円の一部が切り取られたクワ型になっています。 丸型端子同様にネジなどで締め込んで使いますが、ネジを全て緩めなくてもクワ型の開いた部分を通すことで つけ外しが容易な点が特徴です。 一方、丸型端子と比べて固定の確実さは一段劣ります。 電源の取り出しなどに比較的よく使われ、特につけ外しの頻度がある程度ある箇所で便利です。

ギボシ端子

ちょっと卑猥な特徴的な形をしている端子です。 丸型やクワ型と異なり、オス・メスの端子でペアで使います。 メス端子の中にオス端子を「カチッ」と言うまで押し込むことで端子同士を接続することができます。 簡単に扱えながら、比較的しっかり固定できるので、配線の延長からセンサ等へのコネクタとして幅広く使われます。 そういった特徴から、自動車整備では最もよく使う端子と言えると思います。

見た目が似ていても、メーカによって若干形状が異なるため、メーカ違いでは上手く接続できないことがあるので注意。

平型端子

ギボシと同様、オス・メスのペアで使います。 ギボシと異なり、平型端子は名前の通り平たい形をしています。 社外のホーンボタンなどでよく見かける端子です。 ギボシと比べ固定力が劣るため、積極的に使うことはありません。 大きなカプラの内部に平型端子が並べて配置されていることが稀にあります。

平型端子はそもそも脱落しやすい構造ですので、できるだけ脱落防止の出っ張りがあるものを選ぶと吉。

番外: 圧着接続端子

これまで説明してきた圧着端子とは少し異なるものですが、 圧着接続端子は配線の延長において便利な端子です。 ギボシはつけ外しが想定される箇所の使用には適しますが、 どうしても端子自体のサイズが大きいといったデメリットがあります。 圧着接続端子は1個の筒状になっており、左右から2本の導線を通して一箇所ずつかしめることで 配線の延長ができる便利アイテムです。 圧着工具セットなどには同梱されないことが多いですが、 エレクトロタップより確実に、そして普通の圧着端子より簡単に配線の接続ができるので、 気になる人は是非試してみてください。

圧着実演コーナー

この記事の締めくくりとして、電装系整備の基本となる「端子の圧着」を実演しながら 整備の様子を追いかけてみましょう。

  1. まずは必要量の導線をカットします。 長い分には切って調節すればいいので、少し長めに取ったほうが失敗しづらいと思います。

  2. 次に端子をつけるために、導線の両端の被覆を剥きます。 基本的に5mmから8mmくらい芯線を出せば大丈夫です。 ワイヤストリッパを使う方法とニッパを使う方法、いずれも紹介しておきます。

    • まずワイヤストリッパを使う場合、使用する導線の太さに合った穴に導線を通します。 この時、刃が当たる位置は芯線を出したい長さに合わせるようにしましょう。 グリップを握りながら導線を引っ張ると端の被覆だけが剥けます。
    • ニッパを使う場合。 ワイヤストリッパの場合と基本は同じですが、先程と違い握力を調節して、芯線を切らず 被覆だけ剥けるようにする必要があります。 いきなり剥こうとするのではなく、一度ニッパの刃を導線の周りにぐるっと一周軽く当てて 被覆に傷をつけてからやるのがコツです。
  3. 続いて圧着端子のカバー(被覆)を導線に被せます。 カバーの種類は端子によって決まりますので、十分注意してください。 ほとんどのカバーは端子をつけたあとにはつけられない構造になっているので、 忘れずに先につけておきましょう。

    万が一被覆をつけ忘れてしまった場合、見た目は悪くなりますが、 絶縁テープを端子に巻いておけば大丈夫です。

  4. 圧着端子を導線に圧着していきます。 圧着箇所は二箇所あるので、順に説明していきます。 圧着工具のカシメる部分は片方が円弧型、もう片方が「M」型になっています。 円弧型の部分に爪の「背中」を当ててカシめ、「M」型の部分で爪を折り返して 芯線や被覆にしっかり食い込ませる構造になっています。

  5. まずは芯線を掴む方を圧着します。 圧着は二段階で行います。 圧着工具の真ん中のカシメ溝に圧着端子の小さい方の爪を当て、 そのまま圧着工具のグリップを軽く握って端子が落ちないようにします。

  6. 圧着端子の大きい爪がある方から導線を小さい爪の方に通します。 この時、小さい爪が芯線、大きい爪が被覆をそれぞれつかめる位置に導線の持ち方を調整します。 そのまま少しグリップを握って仮留めします。 この後本締めをするので、ここでは小さい爪が芯線を軽く掴み、また圧着工具の「M」型の形に沿って 変形していればOKです。

  7. 圧着端子と導線はそのままの状態で、今度は小さい爪を圧着工具の一番小さいカシメ溝に先ほどと同様の状態で 圧着端子をあてがい、そのままグリップを握ってカシメます。 今度はぎゅっと握って手応えがあるところまで締め込んで構いません。

  8. 小さい爪でやったことと同様の手順を大きい爪でも行います。 今度はカシメ溝は「一番大きい溝」→「真ん中の溝」の順で使います。

  9. カシメが終わったら、被覆を端子まで寄せて被せます。 最後の端子を軽く動かしてみて取れないか確認し、大丈夫なら作業完了です。